INAX ARCHI Letter
NO:PT0607
INAX
Inside INAX 『青森県立美術館』
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 青森県青森市に青木淳建築計画事務所が設計した話題の美術館『青森県立美術館』が平成18年7月13日に開館しました。 青森県立美術館の外部や内部の土素材で構成された空間の土の壁(ハンチク)と土の床(タタキ)はINAXの"土を固める技術”が採用されました。今回は青森県立美術館の土の素材による建築空間に採用されたINAXのコア技術をご紹介します。
青森県立美術館の概要 外観 アレコホールとシャガールの舞台背景画:「アレコ」
アレコホールと
シャガールの舞台背景画:「アレコ」
DATA
所在地/青森市大字安田字近野185
建主/青森県
設計/株式会社青木淳建築計画事務所
施工/竹中・西松・奥村・北斗特定建設工事共同企業体
竣工/2005年9月
開館/2006年7月13日

(床・壁仕上げ)
品名/タタキ(土仕上げ、内外装床)、ハンチク(土仕上げ、内外装壁)
施工/INAX、久住章(桜デコ)
 青森県立美術館は、青森市内にある縄文時代の大集落跡:三内丸山縄文遺跡に隣接して建てられました。館内は企画展示室、常設展示室、コミュニティギャラリー、シアター、ワークショップ(創作体験工房) 、レストラン、ミュージアムショップ等が配置され、美術の世界だけでなく、演劇、バレエ、音楽や映画など総合的な芸術を扱う施設となっています。美術館中央のアレコホールには、シャガールが描いたバレエ「アレコ」の巨大な舞台背景画<縦9m、横15m>が展示されています。常設・企画展示室とワークショップは隣接しており、利用目的によって、フレキシブルに空間の広さを変更できます。異なる高さ、広さの各展示室は、床が土素材、フローリングやコンクリートの場所もあり、様々な素材を使用した空間になっています。全ての企画展示室、常設展示室は地下にあり、三内丸山遺跡からは直接、地下2階にアクセスでき、建物全体は地上2階地下2階の4階建ての半地下構造になっています。青森県立美術館は建物、空間、建築素材、使用用途、展示方法などこれからの新しい美術館のあり方を考えた建物です。
*青森県立美術館で使用された工法"タタキ"(土の床)、"ハンチク"(土の壁)は従来の版築、
   三和土(たたき)の施工法や配合とは異なる新しい工法及び配合です。
建物の構成と素材について
 建築の基本的な構成は、トレンチ(壕)状の縦横に切られた地面に上から建物が覆い被さったようになっています。地面(土)の上向きの凸凹が建物の下向きの凸凹と噛み合い、隙間の空間が生まれています。これが展開して美術館全体を構成しています。トレンチ(壕):地面の上向きの凸凹は、鉄筋コンクリートの躯体に土素材を仕上げ材料としています。土の床(タタキ)、土の壁(ハンチク)は、寒冷積雪地での耐凍害性の向上、施工性など様々な観点から、設計・施工方法の段階で検証されました。トレンチに覆い被さる構築体は、鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄骨造の混合構造になっています。
コミッションワーク
コミッションワーク
建物と一体化した恒久型の美術作品弘前市出身の美術家:奈良美智氏の立体作品「あおもり犬」
1階の南側から見たトレンチと建物
1階の南側から見たトレンチと建物
地下2階の東側全景
地下2階の東側全景
『青森県立美術館』の土素材の特徴 (1)青森県産の土材料(2)耐凍害性(屋外)経年変化(屋内)の配慮(3)自然な土を切り取った素材感
土系素材について:求められる性能
 隣接する三内丸山遺跡とのつながりをもたせるために素材デザインに求めたことは、自然な風合いの素材感や発掘現場のような土を切り取ったテクスチュア、適度なバラツキ(色・仕上面精度)でした。また、品質については室内、室外について求めたのは以下のようなことでした。先ず美術展示室を構成する室内は基礎的な要素である材料強度、空気汚染源にならないことや作品展示への適合性などです。屋外は寒冷地のため耐凍害性などが重要視されました。
企画展示室と通路 企画展示室と通路 企画展示室と通路
企画展示室と通路
展示室や通路は"タタキ"と"ハンチク"により仕上げられ、独特の雰囲気をもった空間が作品と融合しています。
ハンチク、タタキに関する配合について
【ハンチク】
壁面の仕上げには、土系素材として"ハンチク"を採用いただきました。ハンチクの配合には青森県産の土材料、砂材料、セメントおよび着色顔料を使用しました。また、耐汚れ性の向上のためコーティング剤を塗布しています。
ハンチク
ハンチク
各原料をミキサーで混合し、配合土をのり面吹き付けのようにエアーの圧力で壁面に吹き付けました。吹き付けた面を、定規やコテなどで削りだして仕上げました。
“ハンチク”の施工・仕上げ
"ハンチク"の施工・仕上げ
企画展示室通路
企画展示室通路
【タタキ】
床面の仕上げには、土系素材として「タタキ」を採用いただきました。タタキの配合には、青森県産の土材料、砂材料、セメント、収縮低減剤および着色顔料を使用しました。特に強度(耐凍害)、乾燥収縮の物性に大きな影響を及ぼす高密度の転圧には、配合土の粒度や含水率の設計が最も重要な制御因子となりました。尚、屋外では耐凍害性を向上させるためにセメント添加量を増やしました。また、耐汚れ性、耐磨耗性、耐凍害性の向上のためコーティング剤を塗布しています。
タタキ
タタキ
各原料をミキサーで混合し、配合土を施工場所まで搬送、敷き均した後、振動プレートなどを使用して転圧して仕上げました。
“タタキ”の施工・仕上げ
"タタキ"の施工・仕上げ
トレンチ
トレンチ
屋外での展示やパフォーマンスのためのスペースで三内丸山遺跡の採掘現場のイメージを土の壁と床で表現しています。
素材開発担当者/総合技術研究所材料技術開発室 前浪洋輝氏、施工開発担当者/タイル建材事業部 商品開発室  栗秋裕次氏のコメント
【ハンチク】
従来の版築は、型枠を建て込み、土を入れ、締め固める伝統的な手法で壁を構築しますが、当工事ではセメントを加えた土系材料を壁に吹き付け、それが固まらない間に形を整え、表面を削り自然な風合いで仕上げるといった工業的な手法を採用しています。生産性を向上させる手法の裏では、過去に遡るような印象を与える素材感、風合いを材料が硬化するまでの短時間で表現しなければなりませんでした。そのため、左官職人/久住章氏の監修のもと、研削道具にも工夫を凝らし何度となく見本を作りましたが、なかなかOKが出ずに、とうとう青木先生にも製作に立会って頂き、表面仕上げで課題になっていた「土を切り取ったような・・・イメージ」がようやく完成しました。トレンチの真ん中に立ち、空を見上げ、森、トレンチへの視線を移すと版築の雄大さと繊細な職人達の仕事ぶりが伝わってくるはずです。そのトレンチと正対する白に塗装されたレンガも無骨ですがとても美しく、互いに引き立てあっているようにみえます。
【タタキ】
床面の三和土仕上げとしてソイルバーン工法の施工実績はありましたが、寒冷地では未経験であり、その配合決定には苦労しました。耐凍害性を高めるには使用する土の粒度の影響が大きいため、特に土の選定に時間が掛かりました。やっと見つかったと思った土は、工事開始前に枯渇していたり、粒度は適切でも成分が不適切であったりして、使用する土を決めるのに直前まで右往左往しました。また、セメント添加量を増やすことで耐凍害性は向上しますが、増やしすぎると施工性が悪化し、材料設計には最後まで苦労しました。この施工実績の少ない配合に対して、現場では、自分たちの腕でうまく施工しようとの意気込みで、積極的に色々な工夫をしていただき、無事仕上げることが出来ました。この様にして仕上がった三和土は、存在感のある版築と融和して土のトレンチの雰囲気を造り出すとともに広大な印象を与えていると思います。
“ハンチク”のディテールアップ
"ハンチク"のディテールアップ
西側の“タタキ”
西側の"タタキ"
営業担当者/首都圏統括支社 首都圏プロジェクト統括営業部 営業開発部 川村文彦氏のコメント
 この美術館は、隣の「三内丸山縄文遺跡」の発掘現場から着想を得て、設計されました。発掘現場にあるトレンチ(壕)のイメージです。そのため、床、壁の仕上げには、本物の土系素材が要求されました。そこで採用されたのが、INAXの土を固める技術でした。建物の内外壁床の相当な部分はこの技術をもとに仕上げられており、美術館としても世界初の試みです。この美術館のテーマのひとつである「土の展示室」は、INAXの技術の展示室ともいえるかもしれません。しかしながら、寒冷地の問題や、施工法、表面テクスチュアなど課題が多く、5年以上の間、試行錯誤の繰り返しでした。施工法では左官/久住章(桜デコ)さんにロスアンゼルスで習得してきていただいた技術をベースに使っています。
B2Fの東側の“ハンチク”
B2Fの東側の"ハンチク"
青森県立美術館のホームページ

青森県立美術館のホームページは左記ボタンをクリックしてください。
http://www.aomori-museum.jp/ja/

株式会社青木淳建築計画事務所のホームページ

株式会社青木淳建築計画事務所のホームページは左記ボタンをクリックしてください。 http://www.aokijun.com/

書籍紹介/INAX出版のホームページ

青木淳作品集、第二集『青木淳 JUN AOKI COMPLETE WORKS |2| AOMORI MUSEUM OF ART』がINAX出版より発売中 左記ボタンをクリックしてください。
http://www.inax.co.jp/Culture/top/pub.html

白色と土色の対比とパブリックトイレについて
 建物外観と内観の基本配色は白色とセピア色の二色。土素材の壁と床は同色ですが、施工方法や仕上げは異なり、壁床面の表面のテクスチュアは表情は豊かで独特の雰囲気を醸し出しています。また、トイレ施設内の洗面器、水栓金具や配管トラップまで白色に塗装しています。タイルは特注で空間イメージに合わせ、白い素地にさらに白い釉薬を掛けてを製作しました。全体は真 っ白な空間に見えますが、白いタイルの目地の色は薄いピンク色です。入った瞬間に淡い色と光が感じられる印象的なトイレです。
設備機器(便器、洗面器、小便器、水栓、アクセサリーなど)小さな金属、樹脂部品まで白色に塗装して真っ白なトイレ空間を実現しました。
入口
入口
通路
通路
B2Fチケットトイレ平面図
B2Fチケットトイレ平面図
自動洗浄:特注
自動洗浄:特注
女子トイレ
女子トイレ
男子トイレ
男子トイレ
多目的トイレ
多目的トイレ
チケットトイレとエントランストイレについて
 B2Fチケットトイレは土壁の穴の中にあるような演出がされています。内部には白い通路があり、入って右手にロッカーがあり左手に曲がるとさらに奥へ導かれます。トイレ内は全てが白く、天井が高く取ってあり、上部から明かりが差し込んだ工夫がされています。縦方向に伸びた開放感のある空間です。1Fエントランストイレは対面に広いロッカールームを装備しています。女子トイレは奥に子供用小便器を設置し、奥行きが深い男子トイレはL型になっています。
大便ブース 右側、左側
大便ブース 右側、左側
1Fエントランストイレ平面図
1Fエントランストイレ平面図
女子トイレ
女子トイレ
男子トイレ
男子トイレ
多目的トイレ
多目的トイレ
館内見取図

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